火災保険と「火事」「火災」という言葉について

コラム

私たちが日常使っている「火事」「火災」という言葉について考えてみます。

(1)辞書

「火事」とは建物・船・山林などが焼けること。火災。≪大辞林 第三版≫

(2)消防庁の火災統計上の定義

火災 「火災」とは、人の意図に反して発生し若しくは拡大し、又は放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう。

(3)火災保険の対象となる火災

損害保険や当社の販売している少額短期保険で定める火災保険の対象となる火災とはどのような意味になるでしょうか?
火災保険の歴史は長いのですが、保険の内容を定める保険約款や商法には火災の定義規定はありません。
保険約款では、火災の定義をせず、問題の生ずる余地のあるものには免責条項を設けています。
例えば、地震による火災は補償しないなど。
ただし、実務的には次のような解釈がされています。
「火災とは、一定の火床なく発生した火、又は火床を離れ自力で拡大しうる火(損害火)」をいう。
また、「場所的・時間的な偶然性があるもの。」

更に、一般的に「火災に該当するもの」、「該当しないもの」の実例を取って、その定義の意味を考えてみます。

【火災に該当するもの】

・石油スートーブから火がカーテンに燃え移って、カーテンとお部屋に損害が発生した。
・ガスレンジの天ぷら油に引火して台所が焼失した。
・積み上げられていた薪に放火された。
・風呂の空焚きで風呂釜が焼け焦げて、延焼して火が及ぶボヤになった。

【火災に該当しないもの】

・煙草でソファーを焦がした。
・石油ストーブを消し忘れて燃料である石油が燃え尽きた。
・囲炉裏の中に手袋を落として焦げてしまった。
・暖炉から火の粉が飛んでブラウスにゴゲ穴が出来た。
・風呂の空焚きで風呂釜が焼け焦げた。
・やかんを空焚きしてやかんが焦げた。
・フライパンの中のサンマが黒こげになった。

フライパンでサンマが上手く焼ければ料理で、焦げたら火災という人はいませんよね?
これを定義に当てはめてみると、「火床を離れ自力で拡大しうる火」ではないし、「場所的・時間的な偶然性はない」と判断できるのではないでしょうか?

ふだん、何気なく使っている言葉も、深く考えてみると難しいですね。